私は現在塾講師歴15年となる現役の塾講師。
今回は塾講師としての本音と裏話をおもいっきり漏らそうと思う。
前提として、私はこの仕事が大好きである。
看護師や助産師として働いていた時もやりがいは感じていたが、
給料が下がっても結婚よりも、続けたかった仕事だ。
(故に現在、独身30代薄給彼氏なしという負け犬の条件をコンプリートしているが、後悔はない)
きっかけは大学時代のアルバイト
大学2年の冬、友人に誘われたのがきっかけで塾のアルバイトを始めた。
なんといっても魅力的だったのは、時給の高さと労働時間の短さ、そしてほぼ動く必要がないという体力的なこと。
勉強はそこそこ出来たほうだが、とにかくどんくさかった私には最良のアルバイトだった。
それまでの私は、単発のイベントスタッフ・結婚式場・デパートの子供服売り場などでのアルバイトをしていたが、どれも休日が丸々つぶれ、体力的にきついのに時給は低く、続かなかった。
そもそも医療系の学部で国家試験を3つ受けねばならないコースにいたため、実習や研究に追われ時間がなかったのもある。
仕事の内容は小学生から高校生までの算数・国語・数学・英語の指導のみ。
保護者への対応は塾長がしていたため、自分には関係なかった。
教えることの難しさと個性的な塾生たち
生徒に勉強を教えるようになって痛感したのは「教えること」の難しさ。
自分で分かっていても、それをどう説明したら生徒が分かってくれるのか。
「えっ、この説明でどうしてわかってくれないの!?」と、フリーズすることしばしば。
個別指導塾だったため、生徒によって指導内容を変えなければならず、慣れるまでは骨が折れた。
それでも生徒が可愛くて仕方ないのである。
授業中に
「先生あのね、わたし今日はじめて生理になったの…」(お、おめでとう…!)、
「カノジョに何かプレゼントしたいからお金ちょーだい」(あげません)、
「受験に合格したら先生にお小遣い1万円あげるね」(本当に手紙付きでご家族からいただきました)など、
突拍子もないことを言ってくる学校では問題児も、
まじめに勉強しているのになかなか成績が上がらずひねくれる子も全部、かわいい。
塾としては「勉強ができる子」が「良い子」であり塾の評判を上げてくれる「お得意様」である。
しかし、講師として生徒と接していると「学校の先生は大変だろうな」と心の中で合唱をしたくなる子どもが数多くいる。勉強の出来不出来の前に、人としてどうなのそれはという行動や発言をする子供も少なくはない。
「塾生」が「お得意様」である以上は、辞められないように工夫する必要がある。
大学生講師を多く起用している塾は、講師が生徒と仲良くなることによって楽しく塾に通えるようにしている。
これには一長一短あり、
子どもが勉強嫌いの場合、お姉さんお兄さんのような身近な存在になることによって、勉強に取り組みやすくなる。
仲良くなると、先生に褒められたくて宿題を頑張る子どももいるので必ずしも悪いわけではない。
一方、年齢が近いことから恋愛感情を持たせるような振る舞いをして、生徒を辞めさせないようにしている塾は残念ながら多数ある。憧れで終わればよいが、実際に大学生講師が高校生や中学生と隠れて付き合っていた、なんてこともある。
実際に他塾で、生徒との付き合いが発覚し、生徒の親が塾に殴り込みに行ったという話もあった。
そうなったら塾はつぶれてしまう可能性も大いにあるのだが。
実際に私も何度か生徒に好きだと言われたことがあるが、断ってしまえば塾を辞めてしまうし、かといって付き合うことは考えられないため、どう受験に意識を向けるかを考えるのが非常に面倒であった。
「今は受験が最優先。合格したらご飯に連れて行ってあげるね」というのが常套句。
そうして晴れて生徒が塾を卒業し、もう一度告白されたらそこできっぱりと断るのであった。
講師の質には雲泥の差がある
もし私が自分の子どもを塾に入れるとしたら、大学生講師ばかりのところには入れたくない、というのが本音。
高給につられ、中学レベルの問題すらろくに解けないのに適当に講師をやっている大学生アルバイトが多々混ざっているからだ。
また、自分ではそれなりに勉強が出来ても、人に教えるのが上手とは限らないというのもある。
よっぽどできた人でない限り、アルバイト1年目や2年目の学生講師に出来ることは知れている。
若い男性講師が多いところも出来たら避けたいところだ。
塾業界にはいわゆる「若い子が好み」な男性が多い。
近くで何人か「そういう人」を見てきたが、生徒の頭を撫でるといったスキンシップが多かったりじろじろ見たりと、はたから見ていてもほんのり気持ちが悪い。
もちろん、そんな気は全くなくまじめに指導している講師が大多数なので、男性講師は全部ダメなどど言うつもりは毛頭ない。
尊敬する男性講師も沢山いる。
その人の好みがどうであれ、心の中だけにしまってあり、行動に移さないのであれば何の問題にもならないわけだし。
しかしもし自分の子どもが女の子であるなら、少しだけ注意を払ってほしいと思う。
本当に出来る生徒の親は子供に過度な期待はしない
子供の反抗期はまだかわいいもので、本当に面倒なのはわが子を信じて疑わない保護者である。
「自分は○〇大を出ているのだから、自分の子どももそれくらいはできるはずだ。出来ないのは塾の教え方がなっていないからだ」と、ことあるごとに威張り散らしに来る。
「自分は塾に行っていなかったから勉強が出来なかったけれど、子どもは塾に行かせているんだから大丈夫。いい高校・いい大学に入れる」と思っている親もかなりの確率でいる。
ここは正直なところ、1週間に1時間か2時間塾に来ただけでそんなに勉強が出来るようになるわけないでしょう、と言わせてもらいたい。
塾は教育の現場であると同時にビジネスの現場でもあるため、そういった親もお客様として対応している。
何でもかんでも塾のせいにするのは、裏では困ったお客様として認識されるだけなので、いいことは一つもない。ゆえにおすすめしない。
結局のところ子ども本人がどれだけ努力するかの話であって、塾は自力でどうにもならない問題を手助けすることしかできない。
宿題はやってこない、授業中も話を聞かない、全くやる気がない、そんな子供の成績が上がるわけないのだ。
自分の子どものことは親である自分が一番わかっていると、ことあるごとに騒ぎ立てる親は、塾だけでなく学校でも同じように主張しているのだろうと認識している。
私が小さな個人塾を選んだ理由
現在私は小さな個人塾で働いている。
敢えて大手を避け、給料面で恵まれているとは言えない個人塾を選んだのには、いくつか理由がある。
1つには先ほど話した、いわゆるモンスターペアレンツとの遭遇を避けるため。
現在の塾では、ひとつひとつの家庭と丁寧に向き合い子どもの情報を共有し、無理のない目標への適切な指導が出来ている。子どもの勉強の進捗状況によってテキストも変えているため、指導は少々面倒が多い。
現状を話しても分かってもらえないような家庭にはご遠慮いただいている。
それで一切の宣伝なしに口コミだけで塾が成り立っているのだから、ありがたいことだ。
来ていただいているご家庭には感謝と、私の持てる最大限の情報や技術を惜しみなく注いでいる。
2つ目は指導内容の自由さ。その生徒に必要なことを分かりやすく教えることが出来る自由があること。
近所の大手集団授業塾は、決まった台本通りの授業以外は許可をしておらず、講師への質問も一切受け付けていない。これは不公平にならないための措置だというのだが、どうも納得がいかない。
まあ、これでよいという講師と生徒がいるから成り立っているのだろう。
私には、質問に来た生徒の分からないところを教えることもできず、授業で分かりやすく説明することもできないのであれば、そんな塾の意味なぞさっぱり理解できない。
このように、大手集団授業塾は縛りが多い。
一方、大手の個人塾は色恋目当ての大学生アルバイトで経費を安く済ませようというところばかりだ。
専属講師を雇うのや社員を教育するのは費用がかさむ。
大学生アルバイトに交じり「きゃーん!そんなこと言わないで~!」などときゃぴきゃぴする気力は、30代半ば。もう、ない。
塾の必要性について思うこと
そもそも塾は必要あるのか?
私立の学校に進んでいるのならまだしも公立の学校の場合、塾に通っていることが前提になってきているように感じる。
実際、学校の授業で「どうせみんなここは塾でやったんだろう」などという先生もいるのだ。
では数ある塾の中から、自分の子どもにとっての良い塾をどのようにして探せばよいのか?
子どもの現状の学力にもよるが、まずは学生講師の多いところは避けるのが無難である。
また、勉強が苦手であれば、安易に周囲と同じ塾に行かせて、通わせているから大丈夫と安心するのも良くない。授業は子どもにとって難しすぎないか、宿題の量は多すぎたり少なすぎたり無理な内容でないか、などは最低限把握しておきたい。
現状、塾に行かせることはほぼ必須となっているが、子どもの学力と勉強スタイルを把握したうえで塾を選ばねばならない。
ちなみに、正しく子どもの学力を把握するためには、
親も中学の勉強内容くらいは理解し、ある程度子どもに教えられるようになっているべきである。
良い塾と出会いたいのであれば、
まずは親が冷静になり、その塾の指導力を見極めるだけの知識を身につけるといいだろう。
以上、塾講師の本音・第一弾でした。(まだ続くんかい)